この記事の結論
- 業務改善助成金の令和8年度版は、2026年9月1日から申請開始です。今(6月)は「申請の準備期間」。動き出すなら今がちょうどいい時期です。
- ねらいは「賃上げと一緒に、生産性が上がる設備を入れる」こと。最低賃金を上げる中小企業に、その元手として最大600万円までを助成する制度です。
- 令和8年度はコースが50円・70円・90円の3つに整理され、対象になる会社の範囲も広がりました(くわしくは本文で)。
- いちばんの落とし穴は申請の「順番」です。交付決定の前に設備を発注すると、それだけで対象外になります。先に申請、あとから発注。これを外さないでください。
- 私は中小企業や介護施設を外部から支援してきましたが、助成金で大事なのは「いくらもらうか」より「入れた設備が、現場の運用に根づくか」です。入れただけで使われない設備は、助成金が出てもムダになります。

⚠️ この記事の数字について: 制度の金額・期間・要件は、必ず厚生労働省「令和8年度業務改善助成金のご案内」(PDF)など公式の情報で最新を確認してください。本記事は2026年6月時点で公開されている情報をもとに整理したもので、申請の可否や個別の条件は、お近くの労働局・労働基準監督署の判断が優先されます。
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| あなたの状態 | おすすめのセクション |
|---|---|
| 🅰 令和8年度で何が変わったかをサッと知りたい | 「令和8年度の変更点」 |
| 🅱 いくらもらえる/対象になるか知りたい | 「対象と金額」+「いくらもらえる」 |
| 🅲 9月の申請に間に合わせたい/何を買うか迷っている | 「6月の準備」+「何を買えばいい」 |
令和8年度の業務改善助成金、何が変わった?

結論から言うと、令和8年度(2026年)は「申請が9月開始に後ろ倒し」「コースが3つに整理」「対象になる会社が広がった」の3つが大きな変更点です。 まずここだけ押さえれば、全体像はつかめます。
令和8年度の主な変更点(ざっくり)
| 項目 | 令和8年度(2026年) |
|---|---|
| 申請の開始 | 2026年9月1日から |
| 申請の締切 | 2026年11月30日まで(※地域別最低賃金の発効日の前日と、いずれか早いほう) |
| コース | 50円・70円・90円の3コースに整理(旧30円・45円コースは廃止) |
| 助成率の分かれ目 | 事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4 |
| 助成の上限 | 最大600万円 |
| 対象になる会社 | 範囲が広がった(次のH2でくわしく) |
| 予算 | 前年より約20億円アップ(制度が拡充の傾向) |
⚠️ よくある勘違い:「介護の補助金」と混ざっていませんか?
ここで一つ、現場で本当によくある混乱をほどいておきます。
業務改善助成金(この記事の話)と、介護テクノロジー導入支援事業(介護のICT・ロボット補助金)は、まったく別の制度です。
| 業務改善助成金 | 介護テクノロジー導入支援事業 | |
|---|---|---|
| 所管 | 厚生労働省(労働局) | 各都道府県 |
| ねらい | 最低賃金を上げる元手づくり | 介護現場のICT・ロボット導入 |
| 対象 | 中小企業ぜんぱん | 介護事業所 |
| 申請先 | 労働局・労働基準監督署 | 都道府県 |
名前も補助率も似ているので混ざりがちですが、申請先も条件も違います。 介護のICT補助金のほうを知りたい方は、介護のICT補助金(介護テクノロジー導入支援事業)の記事をどうぞ。介護事業所は、この2つを「両方」使える場合もあります(後半で触れます)。
📌 ここまでで分かること: 令和8年度は「9月1日開始・3コース・対象拡大」。そして業務改善助成金 ≠ 介護のICT補助金。まずこの区別から。
そもそもどんな制度?対象になるのはどんな会社?
ひとことで言うと、「従業員の最低賃金を引き上げ、その代わりに生産性が上がる設備の費用を国が助ける」制度です。 賃上げと設備投資をセットで進める会社を応援する、という考え方です。
制度の仕組みを15秒で
流れはシンプルです。
- 会社が、職場でいちばん低い時給(これを「事業場内最低賃金」と呼びます)を、決められた額(50円・70円・90円)以上引き上げる
- そのために、生産性が上がる設備(機械やシステムなど)を導入する
- その設備の費用の一部(最大4/5)を、国が助成する
つまり「賃上げ」が条件、「設備投資の補助」がごほうび、という構造です。賃上げだけでも、設備投資だけでも対象になりません。両方そろって初めて使えます。
対象になるのはどんな会社?
大きく2つの条件があります。
- 中小企業・小規模事業者であること(業種ごとに、資本金または従業員数の上限が決まっています)
- 事業場内最低賃金と、地域別最低賃金の関係が条件を満たすこと
この2つ目が、令和8年度で広がったポイントです。
⚠️ 対象拡大のポイント(令和8年度): これまでは「事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差が50円以内」という、わりと狭い縛りがありました。令和8年度からは、その50円の縛りがなくなりました。いまの職場の時給が、その地域の最低賃金を下回っていれば、広く対象になる方向で見直されています。「うちは差が大きいからムリ」とあきらめていた会社にも、チャンスが出てきました。
📌 ここまでで分かること: 業務改善助成金は「賃上げ+設備投資」のセット制度。令和8年度は対象の会社が広がったので、過去にあきらめた会社も一度確認する価値あり。
結局いくらもらえる?

結論は「賃上げの幅(コース)と、引き上げる人数で上限が決まり、その範囲で費用の3/4〜4/5が助成される」です。 最大は600万円ですが、いきなり満額ではなく、条件を積み上げて上限が上がっていきます。
コースと助成率
| コース(賃上げ額) | 助成率(事業場内最低賃金で変わる) |
|---|---|
| 50円コース | 1,050円未満:4/5 / 1,050円以上:3/4 |
| 70円コース | 1,050円未満:4/5 / 1,050円以上:3/4 |
| 90円コース | 1,050円未満:4/5 / 1,050円以上:3/4 |
表を見て「3つとも同じでは?」と思った方、鋭いです。助成率は『コース(賃上げ額)』では変わりません。 助成率を決めるのは「今の時給が1,050円未満か、以上か」だけ。コースは"いくらまで助成されるか(上限額)"を、助成率は"今の時給"を見る、と覚えてください。
ポイントは、今の時給が低い会社(1,050円未満)のほうが、助成率が手厚い(4/5)という点です。これから賃金を底上げしたい会社を、より強く後押しする設計になっています。
かんたんな計算イメージ
たとえば、事業場内最低賃金が1,000円(=1,050円未満なので助成率4/5)の会社が、生産性向上のために100万円のシステムを入れたとします。
- 助成額のイメージ:100万円 × 4/5 = 80万円(※コースごとの上限額の範囲内であること・賃上げ要件を満たすことが前提)
実際には、引き上げる人数やコースごとに上限額が決まっているので、この単純計算がそのまま通るわけではありません。ですが、「自己負担2割で設備が入る」感覚はつかめると思います。
⚠️ コースごとの上限額・人数の数え方は毎年見直されます。自分のケースでいくらになるかは、必ず厚生労働省の最新案内か労働局で確認してください。 この記事の数字だけで投資額を決めないでください。
📌 ここまでで分かること: 助成率は3/4〜4/5、上限は積み上げで最大600万円。今の時給が低い会社ほど手厚い。「自己負担2割で設備が入る」のがイメージ。
9月の申請に間に合わせるには、6月の今なにをすればいい?

結論は「7〜8月のうちに『賃上げの計画』と『設備の見積書』をそろえておく」です。 9月になってから動き出すと、見積取得や社内の合意形成が間に合わず、申請枠が埋まってしまうこともあります。今が準備のベストタイミングです。
6月〜8月にやることリスト
| 時期 | やること |
|---|---|
| 6月(今) | ①制度の全体像を理解する(この記事)②自社が対象か労働局に確認 |
| 7月 | ③「どこの時給を、いくら上げるか」を決める ④入れたい設備の候補を3つほど洗い出す |
| 8月 | ⑤設備の見積書を取る(複数社から) ⑥賃上げと設備をつなぐ「改善の筋書き」を文章にする |
| 9月 | ⑦申請開始と同時に交付申請を出す |
「改善の筋書き」って何を書くの?
申請では、ただ「設備を買います」では通りません。「この設備を入れると、こういう作業が減って、その分の余力で賃上げを続けられます」という筋書き(=生産性向上の計画)が要ります。
むずかしく考えなくて大丈夫です。たとえばこんな形です。
- 今:請求書づくりに毎月3日かかっている(手作業)
- 設備:クラウドの会計・請求システムを入れる
- 後:請求書づくりが半日に減る → 空いた時間を現場に回せる → 人件費を上げても回る
この「作業が減る → 余力ができる → 賃上げが続けられる」のつながりが書ければ、筋書きとして十分です。
📌 ここまでで分かること: 9月申請に間に合わせる鍵は8月までの見積取得。そして「設備で作業が減る→賃上げが続く」という筋書きを一枚にまとめておくこと。
助成金で何を買えば生産性が上がる?

結論は「人がくり返している手作業を、まるごと肩代わりしてくれる設備」を選ぶことです。 「あったら便利」ではなく「これで毎月◯時間減る」と言えるものを選ぶと、申請も通りやすく、入れたあとも使われます。
選ぶときの「3つの問い」
設備を選ぶとき、私はいつもこの3つを順番に聞きます。
- その作業は、毎月くり返している作業か?(たまにしか起きない作業を自動化しても効果は薄い)
- その作業は、今いちばん時間を食っているか?(請求・記録・シフト・経理あたりが多い)
- 入れたあと、職員が無理なく使えるか?(むずかしすぎる設備は、結局使われない)
この3つに「はい」と言える設備が、費用対効果の高い投資です。
中小企業でよく選ばれる「生産性が上がる設備」
| 困りごと | 入れると効く設備の例 |
|---|---|
| 請求・経理に毎月何日もかかる | クラウドの会計・給与システム |
| 在庫・受発注が手作業でミスが出る | 在庫・販売管理システム |
| 予約・受付を電話と紙でさばいている | 予約・受付システム |
| 何を入れるべきか、そもそも分からない | IT製品の比較・相見積もりサービス |
会計や給与のクラウド化は、業務改善助成金で選ばれやすい「ど真ん中」の設備です。会計ソフトの選び方は、freee・マネーフォワード・弥生の比較記事で、税理士とのつき合い方も含めて整理しています。
関連リンク
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📌 ここまでで分かること: 選ぶ基準は「毎月くり返す・時間を食う・無理なく使える」設備。会計や受発注のクラウド化が定番。迷ったら相見積もりで複数社を比べる。
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申請の順番を間違えると不採択になるって本当?

本当です。いちばん多い失敗が、これです。 交付決定の前に設備を発注・購入してしまうと、それだけで対象外になります。「先に申請、あとから発注」。この順番だけは、絶対に外さないでください。
正しい申請の流れ(順番が命)
``` ① 交付申請(計画書・見積書を出す) ↓ ② 交付決定(国からのGOサイン)★ここまで待つ ↓ ③ 設備の発注・導入 + 賃上げの実施 ★決定の後に着手 ↓ ④ 実績報告(やったことを報告) ↓ ⑤ 助成金の入金 ```
ポイントは★の2つです。
- ②の「交付決定」を待たずに③の発注をしない(先に買うと失格)
- 賃上げも、交付決定の後に決められた期間内で実施する
⚠️ やってはいけないこと(不支給・対象外になる例):
- 交付決定の前に、設備を発注・契約・購入した
- 申請の前に、もう設備を入れてしまっていた(事後申請はできません)
- 助成を受けたあとに、賃金を引き下げた/対象の従業員を解雇した
📌 ここまでで分かること: 順番は「申請 → 交付決定 → 発注・賃上げ」。決定前の発注は一発アウト。見積もりは先に取ってOK、発注は決定後。
介護事業所が使うなら、何を入れるのが正解?

結論は「記録・請求・シフトなど、毎日くり返す事務をラクにする設備」です。 介護はとくに人手不足で、最低賃金の引き上げが経営に直接ひびきます。だからこそ、業務改善助成金との相性が良い業種です。
介護事業所で「生産性が上がる設備」の例
- 介護記録ソフト(手書きの記録・転記をなくす)
- 見守りセンサー・インカム(夜勤の見回り・連絡をラクにする)
- シフト作成・勤怠の管理システム(毎月の組み直しを自動化)
どれも「職員が毎日くり返している作業」を肩代わりする設備です。介護ソフトの選び方は、介護ソフト主要4社の中立比較(カイポケ・ほのぼの・ワイズマンなど)で整理しています。値上げや乗り換えが気になる方は、カイポケの値上げ・乗り換えの記事も参考にどうぞ。
介護は「2つの制度」を組み合わせられる
ここが介護事業所ならではのポイントです。
- 業務改善助成金(この記事)=賃上げ+設備
- 介護テクノロジー導入支援事業(介護のICT補助金)=ICT・ロボット導入
- さらに、2026年6月の改定で処遇改善加算にも「生産性向上に取り組むと上乗せ」が入りました(生産性向上加算の記事で解説)
つまり介護事業所は、「賃上げの助成金」「ICTの補助金」「加算の上乗せ」を、同じ"業務改善"の取り組みで重ねて取りにいける立場にあります。制度がバラバラに見えて、実は「現場の手作業を減らす」という一点でつながっています。
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🔗 介護で「何から手をつけるか」を相談したい方へ: 「制度は分かったけど、自分の施設では何から始めればいいか分からない」——そんなときは、うごくしくみの問い合わせフォームから、業務の棚卸しのご相談を受け付けています(無料)。
📌 ここまでで分かること: 介護は記録・シフト・請求の設備が定番。そして業務改善助成金・ICT補助金・処遇改善加算を"業務改善"で重ねて取れるのが介護の強み。
この助成金が向いている会社・向いていない会社
最後に、判断の目安を表にします。
| こんな会社 | 向き・不向き |
|---|---|
| 最低賃金の引き上げが、もう避けられない | 向いている(どうせ上げるなら設備の元手も取る) |
| 毎月くり返す手作業に、時間を食われている | 向いている(設備で減らせる余地が大きい) |
| 介護・福祉など、人手不足が深刻な業種 | 向いている(複数制度を重ねやすい) |
| 設備を入れる気がなく、現金だけ欲しい | 向いていない(設備投資が前提の制度) |
| 「交付決定まで待つ」段取りが社内で守れない | 向いていない(順番ミスで対象外になりやすい) |
「向いている」に当てはまるなら、令和8年度は対象も広がって、動くだけの価値がある年です。
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よくある質問(FAQ)
Q. 交付決定の前に設備を発注したら、どうなりますか?
A. 対象外(不支給)になります。これがいちばん多い失敗です。見積もりを取るところまでは先に進めてOKですが、発注・契約・購入は、必ず国からの「交付決定」が出てからにしてください。
Q. 賃上げは、いつやればいいですか?
A. 先に賃上げをしてから申請するのではなく、申請 → 交付決定 → 決められた期間内に賃上げと設備導入、という順番です。具体的な時期は計画に書いた内容と労働局の指示に従ってください。
Q. 営業用の車(一般車両)は対象になりますか?
A. 令和8年度は、一般的な車両は対象外の方向で見直されています。対象経費は「生産性が上がる機械・システム・コンサル・人材育成」が中心です。何が対象かは、申請前に必ず労働局に確認してください。
Q. 介護ソフトのクラウド利用料は、対象経費になりますか?
A. 生産性向上に直接つながる設備・システムであれば対象になり得ますが、月額利用料の扱いは制度の細かいルールによります。「この経費は対象か」を一つずつ労働局に確認するのが確実です。介護事業所は、ICT補助金のほうが合う場合もあります。
Q. 申請は自分でできますか?社労士に頼むべきですか?
A. 自分でも申請できます。ただ、計画書づくりや書類の整え方に不安があれば、社会保険労務士に相談するのも手です。まずは労働局の無料相談で全体像をつかんでから、自分でやるか専門家に頼むかを決めると、ムダがありません。
まとめ:令和8年度は「動いた会社」が得をする年
- 業務改善助成金の令和8年度版は、2026年9月1日から申請開始。今(6月〜8月)は準備期間。
- ねらいは「賃上げ+生産性が上がる設備」。助成率は3/4〜4/5、上限600万円。今の時給が低い会社ほど手厚い。
- 令和8年度はコースが3つに整理され、対象の会社も広がった。過去にあきらめた会社も一度確認を。
- 落とし穴は申請の順番。交付決定の前に発注すると対象外。見積もりは先に、発注は決定後。
- 設備は「これで毎月◯時間減る」と言えるものを。入れて使われる設備だけが、本当の意味で得になります。
最低賃金は、これからも上がっていきます。どうせ上げるなら、その元手で生産性も一緒に底上げする——それが業務改善助成金のいちばん賢い使い方です。
次の一歩
🔗 次の一歩: 「何の設備を入れるか」が決まらないと、見積もりも申請も進みません。まずは複数のIT会社から無料で提案・相見積もりを取って、自社に合うものを比べてみてください。
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この記事について
- 執筆:スガヤン(中小企業・介護現場を外部から支援してきた業務改善コンサルタント)
- 更新日:2026-06-17
- 参考にした情報:厚生労働省「令和8年度業務改善助成金のご案内」(PDF)ほか、厚生労働省の公式案内。制度の最新の金額・要件・期間は、必ず公式および所轄の労働局でご確認ください。